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●沖縄の反基地・平和運動の課題 【ヘリ基地反対協共同代表】 安次富浩

沖縄の反基地・平和運動は、日本国憲法の前文で規定している「平和的生存権」の適応を求める闘いの連続と言える。この「平和的生存権」は、名古屋高裁が自衛隊のイラク派兵阻止市民訴訟の判決で示したものである。
SACO合意から米軍再編へと日米両政府の沖縄基地政策が変更した。日米政府は再編交付金という「アメとムチ」で在日米軍の基地機能強化に手を貸している。岩国市庁舎建設問題では建設資金を凍結して岩国市民を恫喝し、厚木基地から米海軍艦載機移転に反対する井沢市長を追い落とした。
沖縄では、表向き「良き隣人」をモットーにする在沖米軍の実態は変わらない。
08年の軍属、軍人関係者を含めた米軍構成員による女性へのレイプやタクシー強盗などの犯罪摘発件数は70件、前年の63件よりも増えている。これらの件数には、泣き寝入りが入っていない。そして、キャンプ・ハンセンの実弾射撃演習による流弾事故や山火事、名護市真喜屋のキビ畑に嘉手納基地所属の軽飛行機が墜落、酒酔い運転による交通事故など枚挙にいとまがない。
基地機能強化は進み、最新鋭のステレス戦闘機F22が米国以外で初の嘉手納基地へ一時的に配置され、その他、外来機の飛来が大幅に増えて爆音を撒き散らしている。キャンプ・ハンセンでは、自衛隊との共同演習も始まっている。
ホワイト・ビーチへの原潜寄港が08年では過去最多の41回を数え、前年の24回を大幅に上回った。大浜石垣市長の石垣港への軍艦寄港反対を押し切り、2隻の駆逐艦が強硬接近した。しかも、メイア在沖総領事は親善を名目に艦長を引き連れて、石垣市民が座り込むピケラインに突入した。
このように、沖縄の負担軽減は絵の餅である。
故橋本首相以降、世界で最も危険な普天間基地の移転先を北部振興策という「アメとムチ」で辺野古水域に押し付けている。小泉元首相は、沖国大キャンパスへの米軍ヘリ墜落事故が生じたにも係わらず、「他府県では引き取り先がない」と汗もかかずにSACO合意の推進を図った。
今年の2月17日、ヒラリー・クリントン国務長官と中曽根弘文外相は「在沖海兵隊のグアム移転協定」に署名した。協定内容は、06年5月に米軍再編に記載された「海兵隊司令部要員8千人と家族部隊9千人のグアム移転」、「普天間基地の辺野古移転」、「嘉手納基地以南の4施設返還」をパッケージとして、グアム費用の日本側負担60億9千万ドルの支出を確認した。ヒラリー長官の突如の来日は、野党政権誕生を見越したうえで、協定による米軍再編の縛りを目的にしたものである。



この協定はまさに「米軍再編協定」である。沖縄の負担軽減を枕詞にしながら、在沖米軍基地の機能強化を目的にしている。辺野古新基地には普天間基地にない軍港を建造し、辺野古弾薬庫から直通する装弾場も配備し、燃料貯蔵施設群など「代替施設」ではないことが判明している。しかも、在沖海兵隊員のグアム移転数があいまいであることが衆院外務委員会の審査において辻元清美(社民党)議員等野党の追及で暴露された。米軍は在沖海兵隊の定数を1万8千人としているが、約10年前のユーレイ定数であり、沖縄県も把握している1万2千人しかおらず、2、3千人がグアムに移転することであり、まさに数字のトリックを悪用した嘘八百なのである。負担費用が海兵隊員のインフラ関連だけでなく、海軍や陸軍などの基地強化に使われることも明らかになった。沖縄の負担軽減をダシに使ったふざけた話である。
そもそも、在沖米軍基地の成立は旧日本軍が強制収用した基地や捕虜収容所にいるウチナンチュの土地を沖縄戦終了直後に取り上げ、その後、ウチナンチュの住宅や農地を「銃剣とブルドーザー」で強制的に追い出し、強奪した結果である。ゆえに、辺野古新基地建設に向けた新たな段階に突入した。5400ページに及ぶ準備書は、海上自衛艦「ぶんご」を投入した違法な事前調査の結果を組み入れ、沖縄県が求めるジュゴン等の海洋生物の複数年調査を無視し、ジュゴンの実数は専門家でも把握できないのに3頭と決めつけ、台風時の環境調査も行わず、しかも後出しのヘリパット4基の設置など、デタラメ極まりない代物である。
市民が意見書を提出できる最後の機会である県環境アセス審査会での審議が5月下旬から始まるであろう。仲井眞県知事らが要求する「沖合移動」を少々の移動で組み入れて、早期に決着を図ろうとする政府。我々はこのデタラメな準備書をアセス審査会の傍聴行動で徹底的に糾弾し、方法書の再度のやり直しを求めていく。
今年は薩摩侵略400年、琉球処分130年にあたる。歴史的にも日本の権力者たちは、沖縄(琉球)を「国内植民地」として差別と抑圧政策で綿々と支配し続けてきた。アジアの平和と自然環境を守るため、辺野古新基地建設、高江ヘリパット反対闘争に勝利することによって、次世代へのウチナンチュとしての自尊心の継承と日本政府への我々の回答となる。



毎日新聞 09 年4 月15 日

関西共同行動ニュース No50