●今は戦争前夜なのか 経済安保法からサイバー防御法が示す未来を問う
海渡双葉さん講演会報告 【共謀罪に反対する市民連絡会・関西】 川口浩一

海渡双葉 弁護士
2025年5月24日、戦争あかん!ロックアクション/共謀罪に反対する市民連絡会・関西/関西共同行動の三団体の主催で表記集会が開催されました。能動的サイバー防御法は集会直前の5月16日には大きな話題となることもなく、すんなり成立していました。マイナーな問題であり、集会の結集ぐあいが心配されましたが、予想をうわまわる108名の結集があり、会場がほぼ満席となりました。
講師の秘密保護法対策弁護団事務局長・海渡双葉弁護士からはパワーポイント画面76枚の詳しい資料が送られてきました。
まず、2013年12月に強硬採決により成立した特定秘密保護法の運用を監視すること等を目的に、2014年1月に設立された秘密保護法対策弁護団に、弁護士になりたての海渡双葉さんも加入し、活動してきたことが述べられました。
2024年5月に成立した「重要経済安保情報の保護及び活用法」(経済安保法)について、①「重要経済安保情報」としての秘密指定をすること、②当該情報にアクセスする必要がある者(政府職員と民間人)に対して政府による調査を実施し、信頼性を確認してアクセス権を付与すること(信頼性評価=適正評価)、③重い刑事罰が規定されていること、と「特定秘密保護法」と全く同じ構図であることが指摘されました。
そして、問題点として、①「重要経済安保情報」の定義が広範かつ不明確なこと、②特定秘密保護法では、特定秘密の対象は4分野(外交、防衛、テロ、スパイ活動)という限定があったが、経済安保法成立を受けて、政府は、漏洩によって安全保障に「著しい支障」がある重要経済安保情報は「特定秘密」が適用できるとしており、法改正ではなく、運用で特定秘密を拡大させようとしていること、③漏洩行為だけでなく、取得する行為についても、5年以下の拘禁刑、500万円以下の罰金刑で、漏洩または取得行為について共謀・教唆・扇動した者も処罰の対象としており、ジャーナリストや市民がある情報を取得しようとした場合にその情報が実は重要経済安保情報に当たるか否かを判断するのは困難であるため、冤罪の温床になる危険が極めて高いこと、④適正評価の調査により、プライバシーが侵害され、内閣総理大臣のもとに設けられた新たな情報機関に膨大な個人情報が蓄積されること、が挙げられました。
こうした流れの中で2025年5月16日に能動的サイバー防御法が成立しました。
この法律は、①サイバー攻撃防止のために同意なくして通信情報を取得すること等を可能にする「ネット監視法」、及び、②サイバー攻撃による重大な危害を防止するため、警察官または自衛官による「無害化措置」と名付けられた先制的なサイバー攻撃を実施する根拠規定として、警察官職務執行法と自衛隊法などを整備した法律、の2つで構成されています。
ネット監視法の問題点として、①憲法21条に違反し、通信の秘密を侵害すること、②収集される通信情報の範囲が極めて広範であること、③令状不要で司法審査が及ばない、すなわち、警察にネットを監視する権限を与えるにもかかわらず、裁判所の令状が必要ないこと、④目的外利用を広く許容する結果となりうること、が指摘されました。
こうしたサイバー空間の日常的な監視に基づき、サイバー攻撃の兆候があれば、管理者に無断で警察や自衛隊がシステムに侵入し、「無害化措置」を実行するというのです。こうした行為に大きな問題があることは、誰の目にも明らかです。
サイバー防御法の問題点として、①「通信情報の利用」という名のネット監視は、憲法に違反し、通信の秘密を侵害すること、②スノーデンが暴いた、国家による違法な監視の実態が分かっていながら、それを合法化しようとしていること、③「アクセス・無害化措置」という名のサイバー版・敵基地先制攻撃は、サイバー空間での戦争行為に等しいこと、④相手国に対する主権侵害という重大なリスクがあること、⑤「サイバー行動に適用される国際法に関するタリン・マニュアル」に即したものになっていないこと、とまとめられました。
日本が戦争に向けて着実に準備を進めていることを改めて認識させられた学習会でした。
反戦闘争を持続的かつ地道に闘い続けなければなりません(川口浩一)。

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