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●「國體」を解体せよ! ※参考文献「靖国史観」小島毅 著 【関西共同行動】 古橋雅夫 

■国体と聖戦

 治安維持法は1925年に制定され、「國體の変革」を考えることを処罰しました。しかし、そこで変革不可とされた「國體(国体)」とは何でしょうか。そしてまた、この「国体」を守るために死んだ魂を「英霊」として祭りましたが、「国体を守る」とはどういう行為をさすのでしょうか。

小島毅さんの著になる「靖国史観」によれば、「国体」の起源は、江戸末期の水戸藩で会沢正志斎による「大日本史」の編纂に始まるとしています。朱子学や国学の影響下で形成された水戸学の下で、古事記や日本書紀にもとづく日本建国神話が掘り起こされ、国学によって神話が歴史事実と見なされます。

 天を支配するアマテラスは、スサノウに出雲の地から東方ヤマトへと東征を命じ、ヤマトタケルの活躍で大和朝廷を成し、最初の天皇がスメラミコト=神武天皇であるという物語です。

 この「大日本史」を書いた正志斎は、この中で「国体」というものを考えます。すなわち、日本神話における天祖アマテラスの神勅とは、それを継承する天皇による威光と天皇に属する領土が「たえず四方にひろがることをめざすもの」であり、国防とはつまり外征に他ならないと説明し、「国体」とは所与の与えられた領土領域を墨守することではなく、はじめから侵略の論理としてあったわけです。

 この思想が、尊皇攘夷思想となり、皇国史観となって、「祭政一致こそが日本の国体であり、それゆえに天皇家は万世一系でありえる」との考えに行き着き、こうした思想の影響を受けた明治維新とは、徳川幕府による地方分権的な武士による軍事統制を解体し、ふたたび中央政府に回収するために、いわゆる人間社会を越えた祭祀をつかさどる天皇の存在によって軍事行動を行うこと。すなわち「聖戦」を実行にすることでありました。重要なことは、「国体」とは、単に天皇を君主として仰ぐ体制ではなく、「天祖アマテラスによる神勅」を奉じた天皇を君主として仰ぐ体制のことであり、従って「三種の神器」によって自身が天皇であることを証明することができ、現天皇にとっても今なお最も重要なものとされています。そしてまた、いかに非合理的であろうが宮中祭司を欠かすことが許されない理由でもあります。

09年 三種の神器と共に天照に報告に向かう徳仁


 逆に言えば、現天皇=人と神との連続性は、この宗教祭祀によって保たれており、仮にこの「国体」が危うくなれば、その天皇を打倒し新たな天皇を立てることによって、神聖普遍たる「国体」が神話時代より継続できたのだという信仰、ないし宗教的心情がいまなお天皇制を支えており、作家の三島由紀夫は、日本人ならこれに共鳴しなければならないと指弾するわけです。

戦前の天皇制とは、明治維新における王政復古の結果、忠孝一本、祭政一致、天神合一のあり方こそが日本の「国体」そのものである再定義することで、この「天祖の威光」を伝える天皇を頂点として作り上げられた国家体制に他ならない。逆に言えば、靖国思想とは、明治維新以降に新たに作り上げられた思想であるということです。

 問題は、「天祖の威光」とは、それを広めるべくする領土拡張の思想であり、明治維新における武力革命を正当化することによって、武家社会を天皇の軍隊に再編することであり、「聖戦」の体現と「不敗神話」の継承と「英霊」の顕彰によるアジア侵略の原動力に他ならないということです。

■靖国と英霊

 また明治維新の王政復古によって、これまでの「官軍」は「賊軍」となり、「靖国(国を安らかにする)」という中国の漢詩を語原とする「靖国神社」の起源は、勝者となった薩長が江戸城を占拠した際に、城内で犠牲となった忠臣をまつったことに始まり、その招魂場に招魂社を建てます。しかし、そこには「賊軍」は含まれず、西南戦争をきっかけに、「靖国」に功労のある「英霊」のみを顕彰するための神社へと発展していきます。

1863年 長州藩奇兵隊―勝てば「官軍」


そしてこの「官軍」は「皇軍」となり、その戦う目的は正義の体現であり、従って負けることはない軍隊となり、戦死者は天皇の名のもとにその大儀の実現に功労があったとされ、「英霊」になるわけです。従って「英霊」とは天皇のために戦ってなくなった戦没者のことであって、「日本のため」に戦って亡くなった人のことではありません。従って、等しく時の政府によって処刑されていても吉田松陰は靖国に合祀され、幸徳秋水はされません。「靖国」思想とは、このように明治維新以降に作られた思想であり、また施設であって、古来の風習・信仰形態とは関係がありません。

 そうして靖国神社は、「官軍」すなわち「皇軍」において、徴兵制度によって駆り集められた兵士たちをやる気にさせる装置となり、日清戦争を契機に、それまでの内戦の延長上に、それ以降の対外戦争もまた不敗神話の中でアジア侵略を正当化する事になります。

 従っていまだ天皇を神と仰ぐ人々は、日本の敗戦を受け容れず、無条件降伏の意味が理解できない。安倍晋三は「ポツダム宣言を読んでいない」と公言して恥じないごとく、皇軍による強制連行、略奪、中国大陸での大量虐殺を認めることができないでいる。最強を誇った関東軍は敗戦間際のどさくさに中国大陸に155万人の日本人移民を置き去りにして撤退。残された彼らは悲劇の逃避行を強いられました。数万人にのぼる残留孤児が生まれたのはその結果であり、侵略した中国の民衆に命を救われました。だが、後に帰国できた彼らを日本政府はどう扱ったのでしょうか。

 つまり靖国神社に対して今なお「日本人なら靖国に祭られる英霊に敬意をいだいて当然」とされますが、そもそも勝ったが故の官軍のみを祭った施設であり、官軍、すなわち天皇のために犠牲となった英霊を祭るための施設にすぎません。さらに言えば、天皇のために戦った(戦わされた)軍人たちの戦死が、そのまま日本国のための尊い犠牲であるとの論理のすり替えを行い、その行為を顕彰するための神社であるかのように見せることによって、台湾人も朝鮮人も天皇のために戦えば「英霊」であるとして合祀したわけです。

■「治安維持法」施行百年

 第一次世界大戦が1914年に勃発し、7000万人の軍人が参加する大規模な戦争とその損失から遁戦気分が蔓延する中、日本は直接の参戦はなく、漁夫の利を得る形で空前の好景気を迎え、民本主義(民主主義)の議論が盛んになります。1917年にはロシア革命が起きます。そして大正デモクラシーの時代を迎え、1925年に男子に限られますが普通選挙法が施行されます。

しかし同時に政府は社会主義・共産主義の拡大を畏れ、引き替えに治安維持法を成立させて国体の変革・私有財産制度を否定する団体・個人を違法として取り締まりを開始します。この守るべきとされた「国体」こそが、先ほどの説明した内容です。

「国体」を変革するということがなぜ犯罪とされたのか。それは天皇を神と認めない=「天祖の威光」を否定することであり、皇軍兵士による「聖戦」を否定する行為に他ならないからです。今風に言えば、日本の他国への侵略に反対し、資本家による搾取に反対する事になるからです。

1937年 来日したヘレン・ケラーを歓迎する人々


 時代は大正から昭和に代わり、その頃は戦時色一色かと思われがちですが、飛行機で太平洋を横断したリンドバーグ、喜劇王のチャップリン、奇跡の人ヘレン・ケラーなどの来日があり、全国で大歓迎される時代でもありました。そうした中で同時に台湾・朝鮮の植民地支配と中国侵略が実行された時代でした。今もそうではないでしょうか。

 しかし、とりわけ広大な中国を支配しきることができない中で、日本の傀儡国家たる「満州国」を建設しますが、日中戦争そのものは膠着状態となり、国内産業は疲弊し財政難に陥ります。国内不満の声を解消し、同時に兵力の確保が喫緊の課題となってくるわけです。赤字国債が発行され、貯蓄が推奨されます。全国に特高警察が設置され、日独防共協定が締結され、軍機保護法が出来、価格統制が行われ、大本営が設置されます。

 こうした時代に、多くの若者がこぞって不敗神話の皇軍兵士となって「聖戦」を戦い、死ねば「英霊」となって靖国に合祀されていくような社会情勢が作られていきました。

■今は戦争前夜か

 2025年の参院選で20年に結党した参政党が野党第3党に躍進しました。その参政党は、下段に掲載した新憲法草案を提案しています。

 その前文で「天皇は日本を統治する悠久の存在であり、それが国体である」と明記し、ほぼ最初に説明した明治維新時代の認識と一致しています。また、天皇は祭祀を主宰し、皇位は三種の神器をもって男系男子のみが継承できると明記する念の入れようです。

 参政党が主張する「日本人ファースト」とは、かつての尊王攘夷思想と同じであり、外国人の排斥を促し、「聖戦」「不敗神話」の復活を試みるデマゴークです。戦争体験者を失い、米国への隷属を強める自民党は、まるで独立国家であるかのごとくに振舞わざるを得ず、こうした参政党のプロパガンダとの親和性は高い。

陽は没し「戦争前夜」を前に國體を解体せよ!

■参政党「新日本憲法」案 2025年5月(前文)

日本は、稲穂が実る豊かな国土に、八百万の神と祖先を祀り、自然の摂理を尊重して命あるものの尊厳を認め、徳を積み、文武を養い、心を一つにして伝統文化を継承し、産業を発展させ、調和のとれた社会を築いてきた。天皇は、いにしえより国をしらすこと悠久であり、国民を慈しみ、その安寧と幸せを祈り、国民もまた天皇を敬慕し、国全体が家族のように助け合って暮らす。公権力のあるべき道を示し、国民を本とする政治の姿を不文の憲法秩序とする。これが今も続く日本の國體である。(略)日本国民は、千代に八千代に繁栄を達成し、世界に真の調和をもたらすことを宣言し、この憲法を制定する。

(天皇)
第一条 日本は、天皇のしらす君民一体の国家である。②天皇は、国の伝統の祭祀を主宰し、国民を統合する。③天皇は、国民の幸せを祈る神聖な存在として侵してはならない。

(皇位継承)
第二条 皇位は、三種の神器をもって、男系男子の皇嗣が継承する。②皇位の安定継承のため、皇室は、その総意として皇室典範を定める。③皇族と宮家は、国が責任をもってその存続を確保しなければならない。







関西共同行動ニュース No99