●「スパイ防止法」とはなにか 【弁護士】 永嶋靖久
これは去る12月13日に、とめよう改憲!おおさかネットワーク主催する集会での 講演内容を古橋が要約したものです。
■推進派は何を提案しているのか
問題は「スパイ防止法」という名称の法律の制定を政治的な攻防の軸にするのではなく、同時に問題の法律が「スパイ防止法」などという名称で登場するとは限らないということです。
たしかに今年の参院選で「スパイ防止法」の制定が色んな政党の公約になりました。しかしその内容は、2026年の通常国会で国庫情報会議設置法を作り、国家安全保障局なんかと並ぶ国家情報局、国家情報局長を作れという内容です。そして上級情報要員、つまりインテリジェンスオフィサー養成機関を作れという公約が自民・維新の連立合意になっています。

要するにこれはインテリジェンスの問題だというふうにすべての政党は説明しています。
■インテリジェンスとは何か
この「インテリジェンス」とは軍事用語で「情報」を意味します。そして情報には「インテリジェンス」と「インフォメーション」の2つがあって、インフォメーションはインテリジェンスの素材で、それを分析してインテリジェンスを作り出す。つまり、政府はこの「インテリジェンス機関」を作れと言っているのです。
日本の情報機関としては現在「内調」と呼ばれる内閣官房の下に内閣情報調査室があり、法務省には公安調査庁、警察庁には公安警察があり、最近できたサイバー警察局などがあります。
そうした中で2026年、来年の通常国会に政府は情報局設置関連法案を出し、内調を国家情報局に格上げして国家情報局長を新設し、首相も参加する国家情報局を作るとしています。
その上で政府は来年の1月に自民党は情報局新設に向けた提言を政府に行い、その後に対外情報機関やスパイ防止法の制定へと進めていくでしょう。
2015年に安保法制が成立した時に、国家安全保障会議作って新しく国家安全保障局ができました。この国家安全保障局は官僚が恒常的に運用している組織で、国家安全保障に関する外交、防衛、経済政策の基本方針を出し、緊急事態対処の際に、国家安全保障に関する外交、防衛、経済政策、提言を総理大臣にします。

さらにここに提供する情報を一元的にもっと高いレベルで収集・分析しましょうというのが、新設されようとしている国家情報局なのです。
■情報機関の新設がなぜ必要か
政府機関が取り組む情報活動には、主に通信信号を傍受するシグナルインテリジェンス=SIGINT(シギント)と敵の組織に入り込む、つまり人との接触を介したヒューミングがあるされています。
すでに日本の防衛省情報本部は、アジア最大級の電波傍受網を持っており、中国などの中国軍などの動向を監視する上で米軍からも頼りにされています。一方で、各国と比べて弱いのは海外でのヒューミングだとされています。これは海外工作活動の事ですね。
ご存じのように CIA、MI6、モサドなどの組織は、機密情報の収集のため敵国に外交官や企業家など表向きの肩書きを持つ工作員を送り込んでいますが、考えるべきはこのような組織がなぜ必要なのかということです。CIAという組織がなぜアメリカにあり、またアメリカはなぜCIAのような組機を必要としているのか? イギリスにはなぜMI6が、イスラエルにはなぜモサドがあるのかという問題を考えましょう。
■ロビー活動規制法とは何か
日本政府のいう情報機関インテリジェンス対策の内容は「スパイ防止法」と「ロビー活動規制法」と「外国代理人登録法」を制定することがその柱となっています。
まず「ロビー活動規制法」ですが、政府は諸外国におけるロビー活動規制というのはどこの国にもあると説明していますが、そもそもロビー活動って何でしょうか。様々な特定の利害を有する個人または団体が政治レベルの意思決定に影響を与えようとする行動のことで、そうした活動を行う主体は企業、労働組合、職能団体、市民社会からの諸団体です。
そしてそのために実際に動くのがロビイストなのですが、それをどこでどのように管理登録し、彼らの支出、財政、ロビイストを雇っているメンバーの支出の公開、電子提出、アクセス、などの透明性を図るかが問題になるわけです。要はロビー活動の規制を外国の利益利害のためにやりたいというわけです。
■外国人代理人登録法に反対せよ
アメリカは外国代理人登録法という法律があります。Foreign Agents Registration ActといってFA‐CCTE(ファーラ)という法律ですが、要するに日本版FARAを作る中に外国の活動および外交影響力の登録制度を設け、外国代理人に登録を義務付けて、登録しなければ外国代理人として行為できないようにする。その行為には政治活動がもちろん含まれます。
国民民主の「スパイ防止法」案は「国は、外国による我が国に対する不当な影響力の行使の防止に資するよう、外国の利益を図る目的で行われる一定の活動を把握し、およびこれを国民に周知するための当該活動を行う者にかかる国への届け出制度の創設、その他の必要な措置を講ずる」という内容です。細かいことはそのあとでといいうことでしょうが、この段階でも私たちは強く反対する必要があるのですが、しかし、そうした声を上げることができでしょうか。
1941年に治安維持法が改正される直前に国防保安法が成立します。その時の政府答弁で「本法は、この法律は国内政治に利用される恐れはないか、また捜査上与えられた捜査官の権限が濫用される恐れはないかという点でありますが、本法、国防法は国際情勢の緊迫化に伴いまして、帝国の国家機密を探知・収集しようとする諜報活動および帝国を内部的に崩壊させようとする謀略活動が行われていますので、これに対抗する手段として立案されたものでありまして、全く外敵に対抗するためのものであります」とする説明は、同様の説明で「外国人代理人登録法」が通過するのではないでしょうか。「今の政府の方針に反対する者は、全部外国勢力の手先である」という80年前の論理に打ち勝つことが、今の私たちにできるのかどうか。心して取り組む必要があります。(講演要旨)

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