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●福島復興の名で進むショック・ドクトリンと対中戦争準備 【イノベーション・コースト構想を監視する会】 和田央子

■被災地はショック・ドクトリンの実践場

原発事故から14年、福島県浜通りは未だ閑散としており生活感も希薄である。そんな人気のない町に、真新しい社屋やインフラが次々と整備され、産業団地には復興をアピールするパネルが並べられている。国は「福島イノベーション・コースト構想」(以下、福島イノベ)と称して浜通りに先端産業を集積し産業復興を目指す。

一見華やかで壮大なイメージだが、そこに原子力災害の被害者の顔は見えない。被害を矮小化し、糊塗したい原子力産業界・学術界と、復興補助金をあてにする諸々の企業が集まり、被災地を草刈り場とするショック・ドクトリンが公然と行われているのが実態だ。

■ハイテクの影の軍事技術

福島イノベは、以下6つを重点分野とする。
①廃炉(事故収束)のための調査研究・人材育成、②ロボット・ドローン、③エネルギー・環境・リサイクル、④ICT(スマート)農林水産業、⑤放射線医療、⑥航空宇宙 である。

これらは一見関連がないように見えるが、よく見ると相互に繋がり合いながら同じ方向を向いている。福島イノベは、これらハイテク産業を浜通りに集積・育成することで「創造的復興」を目指すものだ。しかしハイテク(先進・先端技術)とは、そもそも軍事技術につながる分野であると、井原總東北大学名誉教授は指摘する。

例えば南相馬市に2018年オープンしたロボットテストフィールド(ロボテス)は、災害対応用ロボット、インフラ点検用ドローンの研究開発を名目としていたが、広報ポスターには「陸・海・空のロボット一大実証拠点」と書かれ、防衛省陸上装備研究所も活用することが判明した。

防衛省の狙いは、ロボテスを活用した「CBRN対応の遠隔操縦作業車両研究」だ。イチエフをCBRN(化学、生物、放射能、核)による汚染エリアと見なし、汚染を除去するための遠隔操縦車両を、20㎞もの遠隔地から操縦するという。しかしイチエフ内の作業であれば20㎞離れる必要はなく、これは「戦場を想定したものだろう」と井原教授は指摘する。

■福島国際研究開発機構(F‐REI)

2023年、福島イノベの司令塔となる「福島国際研究教育機構(F‐REI)」が浪江町に設置された。「世界に冠たる創造的復興の中核拠点」を掲げ、研究者500人、雇用5000人規模を目指す。7年間で1千億円の研究予算を投じる外部委託研究がスタートした。研究施設は2027年の完成を目指している。



 研究は福島イノベとほぼ同じ(5分野)で、そこから「新産業の創出」を狙う。いわゆる大学発ベンチャー企業の育成を目指しているのだ。他大学等との連携大学院制度による博士号取得や、女性研究者の積極的な活用を謳うが、軍事につながるハイテク分野の研究には監視が必要だ。



女性研究者には子どもを産んでもらい、人口増を期待して、ゼロ歳児から15歳までの一貫校や、子育て支援住宅を整備した。ここで生まれた子供たちにはこの一貫校で学び、F‐REIやイノベ企業で活躍する「イノベ人材」となることが期待されている。

F‐REIを含む浪江駅周辺の一帯は、大規模な再開発計画が進行中だ。全体のグランドデザインは隈研吾(くまけんご)事務所に委託された。

■防衛テック企業も次々参入

 浪江町に進出した「曾澤高圧コンクリート」は、コンクリートにロボット・AIなど先端技術を掛け算することで、防衛分野への進出を狙う。自社開発した大型ドローンと浮体式洋上風力発電のセットを、排他的経済水域に4000艦配置することで、16万機のドローン防衛部隊ができるとPRする。この無謀な構想が仮に実現すれば、対中戦争準備の一環で日本各地に配備される長射程ミサイルに次ぐ新たな中国への軍事挑発となりかねないが、2025年6月にこれを後押しする法改正(海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に関する法律)がなされ、準備は整えられた。

■米ハンフォード市とのつながり

 2014年1月、赤羽一嘉(あかばかずよし)原子力災害対策本部長(当時)は米国のハンフォードなどを訪問し、福島イノベについて要人と意見交換を行った。米国西海岸ワシントン州にあるハンフォードは、第二次世界大戦当時の極秘マンハッタン計画・原爆発祥の地だ。ここで精製されたプルトニウムは長崎で実践使用された。その後半世紀に及ぶソ連との核開発競争で発生した膨大な核廃棄物の扱いは杜撰を極め、ドラム缶に詰めた高レベル廃液は河川や地中へ投棄された。腐食したドラム缶から溢れ出した廃液は広範囲を汚染し、地域住民に世代を超えた甚大な健康被害をもたらした。

しかし、1988年のプルトニウム製造終了後、大量の除染企業を投入したことで人口が飛躍的に増加、特権的な高福利の町が形成された。核産業で栄える町、「プルートピア(造語)」と呼ばれるものだ。日本政府はこれを成功モデルとして福島に取り入れた。福島復興政策は、米国の原爆開発の地に倣って実行されていたのである。そして日本は今、米国の目論む対中戦争に先兵となって闘う準備を進めている。

福島復興の名の下に投じられる莫大な予算は軍事研究、経済安保に流れ、そしてあっという間に軍拡の波に飲み込まれていくだろう。手遅れになる前に、戦争準備を今何としても止めなければならない。



関西共同行動ニュース No99